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ハイレベルな医療とともに、一人ひとりが使いやすい水まわりを提供

中部国際医療センター

地域の、日本の、世界の医療拠点へ

「全ては病める人のために」という理念のもと、2022年1月、岐阜県美濃加茂市に中部国際医療センターが誕生しました。
その新しい病院名には、「世界に通用するハイレベルな医療を提供する」という決意が込められています。また、地域の医療拠点としての役割を果たし、健康診断から高度な治療、ヘルスサポートまでを提供しています。

予防医学の視点も取り入れた
医療・福祉・保健をつなぐ健康づくりの場。

岐阜県美濃加茂市健康のまち一丁目1番地。それがこの新しい病院の、新たに名前が定めら れた住所です。そこには、地域の中核病院として一丁目1番地から地域の人々の健康を支えたいという熱い想いが込められています。地域医療に貢献してきた木沢記念病院が建物と名称を一新し、機器や設備をさらに拡充して新たなスタートを切りました。地域に根差すことはもちろん、さらに広域にも、「国際」水準にも目を向け、医療ツーリズムにも対応できる先進的な医療の場を目指しています。敷地内には「美濃加茂市保健センター」も設置された「みのかも健康プラザ」を併設。医療・福祉・保健をつないで健康づくりを支援する美濃加茂市の「メディカルシティ構想」と一体になっています。また、予防医学に基づいたメディカルフィットネスの場で温水プールを有する健康増進施設「クラブM」も設け、誰もが気軽に足を運べる憩いの場としても機能。一人ひとりに合った健やかな暮らしをトータルに支えます。

1Fの総合受付。日々の治療や通院がストレスにならないような落ち着いた雰囲気である。
写真提供:中部国際医療センター
9Fの南側に面して設けられた、病棟フロアのデイルーム。広い窓からは市内が一望できる。
写真提供:中部国際医療センター

アクセシビリティの担保によって
患者さんの自立やADLの向上を後押し。

正面玄関を入ると広がる3層吹き抜けの大空間は、ホスピタルモールと呼ばれている。明るく開放的であり、モノトーンの色彩によって心安らぐ心地よい空間である。
写真提供:ロココプロデュース
診療科33科に加えて、専門性を高めた高度専門医療部門とがん専門部門を設置。1・2Fには外来、3Fには手術室・ICUやスタッフラウンジ、4〜9Fには502床の入院病棟を設け、ハイブリッド手術室を含む11室もの手術室を有しています。さらに2023年には、新たに陽子線がん治療センターも開設される予定です。
この病院が目指すのは、すべての利用者に「優しい」医療。正面玄関からメイン動線であるホスピタルモールに入ると、とても開放的で心安らぐ空間が広がっています。院内はスムーズに診察を受けられる移動しやすい施設レイアウトや分かりやすい案内表示があり、ユニバーサルデザインを取り入れた「訪れやすい」施設に。日々の治療や通院がストレスにならないように、訪れる人々に寄り添うホスピタリティ・マインドを大切にしています。外来機能は低層階にまとめたことで、患者さんはほぼフロアの平行移動になり、アクセシビリティ(利用のしやすさ)が担保されています。
水まわりも使いやすさに配慮しているため、そのことが患者さんが積極的に「使おう」という気持ちにつながり、自立やADLの向上を後押ししています。清掃性や機能性を確保した設備を採用するとともに、車いすでの利用を多く想定し、使いやすい広さを確保したバリアフリートイレを随所に配置。また、乳幼児連れ、オストメイトなど、幅広いトイレの利用者に対応できるようにバランスよくレイアウトされています。

外来の男性用トイレの洗面コーナー。吐水位置が高く、広い吐水空間を確保するグースネックタイプの自動水栓で、しっかりと手洗いができる。
2F外来のバリアフリートイレ。はね上げ手すりやL型手すり、大型ベッドのほか、乳幼児連れにも配慮し、ベビーシート、ベビーチェア、フィッティングボードなどを完備している。
男性用トイレの自動洗浄小便器。汚れやすい床面の清掃性に配慮して、壁掛けタイプを採用している。
外来のトイレの並び。シンプルで分かりやすいサインで、どんな機能が備わっているかも一目瞭然である。

すべての患者さんを見守りやすく
スタッフの動線を短くするレイアウト。

 病棟はナーシングホール(その中心にスタッフステーション)を中心とした360°見守りやすい設計で、患者さんの状態が把握しやすく、看護動線も短縮。EVホールから東西に分かれてそれぞれにナーシングホールがあるため、コロナ感染拡大時にはドアで隔てて、感染管理にも有効に機能しました。
 トイレが近い場所にあるのは患者さんの早期離床につながるという考えから、アクセスしやすい距離に配置されています。また、急性期から回復期まで病棟ごとにトイレの手すりなどを変える工夫を行い、各診療科に合わせた設計となっています。
 内装材に関しては、接触ポイントについては抗菌・抗ウイルス素材を積極的に採用。木質系などの素材においては、耐薬品性を考慮しています。床材はノンワックスで、メンテナンスのしやすいものにしました。

5F回復期病棟の個室。部屋の出入口に近いところに、車いすでも使いやすい洗面コーナーがあり、その奥にトイレ・シャワーユニットが設けられている。
重症患者向けの病室は、スタッフが介助しやすいようベッドに近い位置に洗面が配置されている。
4床室の患者さんが使える共用トイレは廊下側に出入口が設けられているが、移動距離が短いため安心して利用できる。患者さんのプライバシーに配慮し、臭いや音など、他の患者さんへの影響が抑えられ、スタッフも様子が分かりやすい。
ナーシングホールの中心にあるスタッフステーションから、病室やトイレなどが見渡しやすい設計となっている。 
写真提供:ロココプロデュース
3Fに10床あるガラス張りのICUのスタッフステーション。
写真提供:ロココプロデュース
ICUのスタッフステーションの手洗いコーナーは、あふれ面の高さを850㎜に設置することで腰をかがめずに利用でき、前傾姿勢による腰への負担を減らして快適に利用できる。
最上階の9Fに設けられた特別室。モノトーンの落ち着いた雰囲気でゆとりと上質さのある空間は、まさに中部国際医療センターが標榜している「国際水準」を感じさせる。
特別室の浴室・トイレ・洗面コーナー。トイレは大きな引戸で使いやすく、車いすでも大便器にアプローチしやすいようにレイアウトされている。

病院長先生からの声

voice

「国際水準」の医療を提供しながら
地域交流の場としても機能します。

1913年に開設されて以来100年以上の歴史を持つ木沢記念病院は増築を繰り返し、手狭であり迷路状態であるなどの弊害がありました。そこで移転を決めて新たな環境で地域医療に貢献し、地方においても最先端の医療を提供したい、さらには24時間断らない救急医療を行いたいと考えています。病院名には、中部地方を代表する病院の一つになり、かつ「国際水準」の医療を提供したいという想いが込められています。新病院は広くて落ち着きのある空間で、地域交流の場としても機能するような病院らしくない病院です。トイレに関しては清潔さも使いやすさも向上したと思いますが、それでも何か特別なことをしたわけではありません。今後は、「さわやかサービス委員会」という組織も立ち上げたので、患者さん、スタッフ、地域の方々がよりコミュニケーションを取りながら改善や向上を図りたいと考えています。

病院長

出口隆さん

整形外科病棟の看護師長さんからの声

voice

転倒対策や自立促進も向上しました。

以前の病院は増築を繰り返したことにより段差もかなりあったので、フラットで安心できるバリアフリー空間になって転倒対策も向上しました。外来や病棟などのフロア分けもしっかりなされて防犯性も高まりましたし、ほとんどワンフロアで完結する動線になって階をまたぐ上下移動が少なくなったことも大きなメリットだと感じます。新病院では病棟トイレが距離的に近くなり、トイレ待ちの苦情がなくなりました。以前は介助付きで利用できる車いすトイレの前に行列ができ、隣の病棟まで行くこともあったのです。また、今まではトイレまで歩く過程で患者さんが疲れたり転んでしまうこともあり、トイレが嫌になって自立排せつの妨げにもなっていました。今では介助付きで入れる広さのトイレの数も増え、介助の負担も軽減されました。4床室にも洗面コーナーが設置されたことで、みんなが歯磨きをするなど自立度が上がりましたし、自動水栓で清潔さが保てるのもいいですね。個別の浴室が複数できたことも、患者さんがゆっくり使えるようになりうれしいです。また、大部屋でも6床室ではなく4床室になったことで、どの患者さんでも落ち着ける部屋の角になり、一人ひとりのスペースも広くなって良かったと思います。

整形外科病棟
看護師長

渡邉かおりさん

設計担当の方からの声

voice

病院に関わるさまざまな人の存在を感じる
ホスピタルモールは「人のつながり」を体現しました。

病院設計では「動線の分かりやすさ」が非常に重要なので、病院の基軸動線であるホスピタルモールから各部門へスムーズにアクセスしやすいように計画しました。3層吹き抜けでラウンジを各所に計画することで病院に関わるさまざまな人の存在を感じられる空間となり、病院スタッフや患者さんの居心地のよさ・安心感につながっていると思います。

株式会社久米設計
名古屋支社 副支社長

矢永勝美さん

設計担当の方からの声

voice

スタッフが患者さんに寄り添い、
より良い医療が提供できる環境を目指しました。

建物計画で大事にした「見守りできる」「見渡せる」のコンセプトは、関係者の皆さまと一緒に作り上げました。スタッフステーションから全方位を見渡せる病棟、ガラス張りで見守りしやすいICUなど、患者さんに寄り添う新病院の考え方が反映されています。他病院視察やショールームでの介助方法確認などで方針共有できたのも良かったと思います。

株式会社久米設計
設計本部
名古屋支社 主管

矢部亮さん

竣工年月 2021年9月
所在地 岐阜県
施主 社会医療法人厚生会
設計 株式会社久米設計
延床面積 約59,516m2
病床数 502床

研究誌
病院と福祉のトイレ
VOL.19

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