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換気と空気清浄による感染対策と快適環境の両立

病院や福祉施設の感染対策と快適環境を両立するために重要となる「換気」と「空気清浄」について解説します。

医療福祉施設の感染対策において重要なキーワード
「換気」×「空気清浄」

新型コロナウイルス感染拡大以降、人が集まる場所において安全で安心な空間づくりを求める声が非常に多くなりました。医療福祉施設における感染対策として有効な「換気」や「空気清浄」の手法を学び、感染対策と快適な空間の両立について考えてみましょう。

菌・ウイルスの空気中での遷移


飛沫感染の元と言われる「飛沫」ですが、水分を含んでいるため一定の大きさとなり、5μm程度のサイズがあります。大きい飛沫やホコリなどは一定時間浮遊して床に落ちていきます
が、エアロゾルとも呼ばれるような小さな飛沫や、ウイルス、細菌などは浮遊して天井方向へ上がっていきます。

病院における空気感染対策は2つ


空気感染(エアロゾル感染)の低減には換気による希釈とフィルタなどによる空中からのろ過の2つの原理での対策が必要になります。特にウイルスは0.02μmと小さいため、空間に浮
遊する時間も長くなってしまいます。そのため換気とフィルタによる空気清浄で適切な対策をとることが重要です。

病院・クリニックのお困りごと 33.6%が「換気・空調」


病院・クリニックの汚物処理室について、お困り事はありますか?と看護師へ向けてアンケートをとったところ、33.6%が「換気・空調」をあげる結果となりました。換気・空調に期待する高い関心が集まっていることが分かります。

窓開け換気の弊害

夏場や冬場は窓開け換気で大幅なエネルギーロスが発生します。

効率的な換気を行うためには、機械設備による換気がおすすめ

第1種換気の優位性

機械換気の方式は3種類に分類され、用途によって使用される方式が異なります。新鮮な外気を取り込む「給気」、室内の汚れた空気を排出する「排気」、これら両方を機械設備で行うのが第1種換気です。給気だけを機械で行うのが第2種換気、排気だけを機械で行うのが第3種換気です。
例えば病院の手術室や工場などで採用される第2種換気は、外部から汚れた空気が流入しにくいように給気を機械で行います。そのため、手術室のように病院の中でも特にクリーンに保ちたい場所に多く用いられます。
規模の大きいオフィスビルなどで採用されている第1種換気設備で最も採用されているのが、全熱交換器です。給気、排気を両方ファンで行うため、給気や排気がなりゆきになりがちな他の方式と違いファンの力でしっかり居室内の空気を循環させる事が可能です。

第1種換気の代表的な設備「全熱交換器」


窓開けやドア開けで換気量を増やすと、エネルギーのロスなどといった様々な弊害が生じます。第1種換気の代表的な手法である「全熱交換器」は、屋外からの新鮮な空気と、屋内の空調された空気を熱交換エレメントで熱や湿度といったエネルギーだけを回収して室内に戻す仕組みです。これにより室内の温度変化を抑えてエアコンの負荷も軽減することができ、効率的な換気を実現します。

適切な維持管理のため、換気設備のメンテナンスを。


空気は目に見えないため、換気ができているか不安に思うユーザーも多いようです。そこで重要になるのが定期的なメンテナンス。メンテナンスを怠るとフィルターや熱交換エレメントにごみやホコリが詰まり、換気風量の低下につながります。一般的に換気装置は天井内に設置されていることが多く、高所作業を伴うので、メーカーまたは専門業者に依頼することが大切です。

空気清浄による対策

厚労省より発表されたガイドラインには、「換気の悪い密閉空間」の空気環境を改善する方法として、HEPAフィルタを活用した空気清浄も有効であることが記載されています。下の図のように室内の必要換気量に対して全熱交換器の換気で足りない分を空気清浄機で補うことができます。ただし、空気清浄機では外気を取り入れないので、CO2が減ることはないことに注意が必要です。


■見かけの換気量
フィルタを通過することによって有害物質をろ過した空気を換気と同等として考え、フィルタの捕集効率×処理風量を相当換気量とする考え方

(例)HEPAフィルタの捕集効率が99%、空気清浄機の風量が300㎥/h (5㎥/分×60分)のとき、0.99×300=297 ㎥ /hを「相当換気量」とする。

(当研究会研究誌20号P12・P13から抜粋)

研究誌
癒しのトイレ
VOL.20

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